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ガールズトーク

幼馴染みのMちゃんに、この現状を話したのは12月1日。どうしても口で説明したくてわざわざ川崎まで出向いていった。彼女がこの話を聞いたら「ドン引き」すると思われたが、意外にも彼女は冷静だった。(彼女はもともと落ち着いた女性だが)そして、心から「○○(私)が東京に来てくれるのを待ってる」と言われた。つらいだろうし、大変だろうし、家も建てちゃってるし・・・・でも、HAのことを話している時の私は、昔の私だと。ちょっと攻撃的で野心があって、・・・・・だと。それが昔から彼女が知る「私の本当の姿」で、その私を好きだといってくれているHA君となら上手くいくと。旦那を尊敬できない時点で「終わっている」と。

彼女は過去に2~3回ほどHAには会っている。最初は私の男友達として。3回目くらいはコンパの主催者として。

「HA君って、話は面白いし、モテるタイプだよね~。かっこいいし」

「かっこいい??」嬉しいような、嬉しくないような気分だった。本当は”かっこいい”と思っている。でも親友の前でも「彼ってかっこいいの~」って言うほど浮かれてもいなかった(笑) 実際、結婚していても年上の女性から「誘われる」男だから、モテることは間違いなかった。そんな魅力に吸い寄せられる女の一人に過ぎないのに、その群がりに私が加わって横並びな感じがして複雑だった。ただの嫉妬に過ぎないのだが。

2人目にその心情を明かすことになった友人は、かつてW不倫で「負債」を負ったことのある子だった。その子は相手の奥様に毎月支払う「ローン」のかたちをとって慰謝料を2年近く支払い続けた経歴のある持ち主だった。だから、いろいろ聞きたくなったのだ。

彼女はその事件から、自由に外出することができなくなった。携帯もしょっちゅうチェックされるようになった。携帯の明細と照らし合わせもされるとのことだった。いくら、金沢で私と会う、と言っても基本的にはNGで、彼女と食事をするためには私が能登方面に60キロ以上車を走らせることになる。まあ、私の話を聞いてくれるのだから、それはまったく構わないのだが、冬の能登方面への道は暗く、凍結もしており、下手すれば”いのしし”にでも遭遇しそうな感じで、気分は必要以上に重くなっていった。

羽咋市内の繁華街にあるファミレスで、私はその重い心境を話し始めた。過去のことを少し知っている彼女は驚きはしなかった。むしろ、私の旦那のこともよく知っていたので、そちらのほうが驚いたようだった。履歴書を書くのに恐ろしく時間がかかる、会社に提出する作文が書けないと聞くと、そんな生活私には1年も持たないといわれた。ガールズトークになると(苦笑)話の中心は「旦那」であり、どこかで旦那のことを「すごい、かなわない」という気持ちがないと夫婦関係は続かないというのが共通した意見だった。その気持ちがない時点で、終わりだと。いま60代の夫婦ならまだしも30半ばでこれから先の人生をあきらめるのは無理だと。

そこまでは、幼馴染みと同じ意見だ。しかしそこから先が、「石川(田舎)に生まれ、生活している人間」ならではの考えが入ってくる。

「親のことはどうするの?」だ。なによりこれがつらいでしょう・・・・というのは言わなくても通じていた。親は親、自分は自分、生きる道が違う、それぞれの人生・・・・であることは間違いないが、年老いていく親を見捨てて東京に行くことに対する「長女」の苦悩は、彼女がイタイほどわかっていた。彼女も女3人姉妹の長女で、現旦那は婿養子だった。そのことが「離婚」を踏みとどまった大きな要因だった。また、専業農家の家で負債も大きく、旦那がこの先営農することを見込んで、その「手」を広げて営んでいる農家ならではの事情もあった。

不倫の件が明るみになった時、彼女の両親は、婿養子である彼女の旦那に土下座して謝罪した。その姿を見た彼女はどんなに辛かったろう。

親に対する”想い”は田舎も都会もない、と思うかもしれない。実際そうだとも思う。でもHAサイドの友人たちの話にはそんな空気がない。ここが一番の温度差で、これを理解してもらうのは不可能に近い。 私とて、両親に対しては深い愛情を持ち、その両親が「娘がW不倫して出て行った」という汚名をきせることに、身を切られるほどつらい思いだ。 私がどんな風に言われようと構わない。 最悪、二度と石川の地を踏めなくなってもいたしかたない。ただ、両親がどんなに肩身の狭い思いでこの先の人生を生きていかなければいけないかと思うと、気が狂いそうになる。

そんなことを思っても、旦那へ対する愛情は戻ってこないことも事実だが。

私が彼女に聞きたかったことはひとつだった。

「ねえ、Nちゃんは、行動も不自由だし、携帯もチェックされているのに、どうして旦那に戻れたの?愛情はあるの?」

そこが一番不思議だった。彼女は重い口を開いた。

「やっぱり、一生一緒にいられるひとはこの人だと思ったから。あんな馬鹿なことはもうしない。愛情があるとか、好きかと聞かれたら微妙だけど、あの人の子供は欲しいと単純に思えるかな?○○ちゃん(私)と違って、私が不倫した相手とは4ヶ月そこらだったし、そんな9年も想いを引きずっていなかったし・・・。比べられないと思う。」

彼女は「今日は飲んでいない(酒)から、上手くしゃべられない」と言った。例の事件以来、自分のことをしゃべるのがうまくできなくなったと。今度一緒に呑みながら話そうと言って、その場は、私のほうがメインでしゃべっていた。

能登の人間から「酒」を奪うと、”ひたすら寡黙な人”なのである(苦笑)。そんな「基本」を忘れていたことを反省した。彼女は公務員(県庁職員)だが、職場に「離婚の手続き」に相当詳しい人がいるから、紹介すると言われた。その人も公務員であるため、”副収入”を得ることはできないから、ちょっとしたお礼(物)で済むと、費用はかからない、彼も趣味でかなり勉強しているから安心だ、と言われた。

費用を払ってでも一度弁護士に相談する必要があると思っていたので、無料というのはそんなに魅力的だとは正直思っていなかったが、法的書類も作成できるとのことで、相談してみようと思った。

携帯の写メを見せながら興奮しているHAとは裏腹に、女は冷静で現実的なのかもしれない。

「でも、○○(私)ちゃん」彼女は続けた。

「東京行っても生活できないよね。どうするの?向こうは○○ちゃんが離婚して東京に出てきてから、自分も離婚するつもり?そこが気になるけど」

そう、そこが微妙だった。そして私もさすがに聞けなかった。

「そこがわからないの」

彼がいつでも俺のところに来い、と住む所も環境(離婚)も整えてくれた後でないと、実際は東京には行けない、というのが、私の理想とは真逆の事実だった。

暗い帰り道、彼が酔っ払いながら言った「お前さー、今すぐにでも東京来てくれよな~」と言った無邪気な言葉を、「そんな軽く・・・・・」と思いながら、ハンドルを握っていた。

彼と一緒になることのハードルの高さを改めて知った。

離婚までの道のり、引越し、そして、彼との温度差・・・・・・・・・・。

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