クリスマスプレゼント
12月24日も25日も、花屋にとっては「普通に忙しい日」なので、当然のように仕事をしていた。寒い日だった。雪こそはあまりなかったが天候はかなり悪く、口を開けば「寒い」しかでないような日だった。
仕事を終え、帰宅する前に必ずHAにメールを送るのが日課の私。いつもようにたわいもないことを書き連ね、最後にメリークリスマス。プレゼントも遅れないし、12月の2日に会ったときに渡したチャーム(二つ重なるタイプ)が私にとってクリスマスプレゼントのようなものだと思っていた。そのシンプルなチャームにはメッセージが書いてあり、
「LOVE WILL FIND A WAY」 ~愛があれば道は開ける~
いろんなところを探し回った結果、結局新宿のトウキュウハンズで購入した。本当はペンダントになっていたが、キーホルダーのように加工してもらい、私は化粧ポーチに、彼は仕事用の鞄の内側のファスナーに取り付けた。 高校生みたいなささやかな幸せだった。
24日の夜9時過ぎに、彼からメールを受信した。
12月2日に私が六本木ヒルズで見た「コットンツリー」が映像で送られてきた。私がそれを見たときに写真を撮りたくて撮れなかった物で、とある雑貨店のショウウィンドウに飾られたかわいいツリーだった。
彼は恐ろしく仕事が忙しいのにも関わらず、職場からタクシーに乗り、運ちゃんをせかし、おつり900円近くを受け取らず、ヒルズのエスカレーターを段抜かし状態で駆け上がり、その写真を撮ったようだ。
私は素直に「超かわいい!すごく嬉しい!ありがとうっ!」とメールに送った。嬉しかった。確かに、その後の彼のメールにもあるように傍から見たらどうかしてる。いいオトナが。私が喜ぶことをただ一途にやり遂げる彼がいとおしくて仕方なった。その写真を撮って欲しいと頼んでから3週間も過ぎていたが覚えてくれていたことが嬉しかった。
日頃、落ち着き払って、表情もあまり変えないクールで話しかけづらい存在の「係長」は、恋におぼれる男子高校生だった。
彼は知っていた。私は物を欲しがらない。素敵なアクセサリーも、服も、鞄も、時計も。高級なホテルでの食事も。そんなことを誰よりも知っていた。ずっと前から。そんなところも旦那とは違っていた。彼は私がどうしたら喜ぶかを未だに知らない。
私は彼にお礼をしたいがどうしたらいいのかわからなかった。どうしたら彼が喜んでくれるかわからなかった。 それに近いことををその前後に彼に話したことがあるが、お前の底抜けのアホ面で笑っていてくれればいい、としか言わない彼だった。
仕事納めが終わると、彼は毎晩のように飲み歩いた。たいていは高校時代の親友と飲んでいた。最初に飲んだ友人は、彼が一番話しやすい、話がわかるやつだといっていた人で、初めて私のことを話した。
そうとう酔っ払っていたんだろう。夜中に電話がかかってきたときは、クリスマスの夜とは大きく違いかなり勢いづいて、若干攻撃的だった。彼はその飲み会が楽しかったりすると勢いが増し「攻撃的」になる、野生の動物みたいだった(笑)
「○○(私)のこと全部話したよ。そこまで好きならしょうがないって言ってた。お前(HA)が幸せになることを考えろって言われたよ。あ、それでお前の写真(写メ)全部見せちゃった(笑) ・・・んっ!?つべこべいうなよ、見せちゃったものはしょうがねーだろ。・・・・・うるせーな~隣りのバイク。CBか?1100?1200?早く消えろよ~。まったくよ~、わざと俺の横でやってんだろ~。・・・・・・なんでいいじゃん。見せちゃったんだもん。おうなんか”元気そうな感じの子だねっ”って言ってたよ。・・・・・なんだよ、怒ってんの?聞こえねーんだけど・・・・」
写メを見せるとは思わなかった(苦笑) 彼の要望に応じて? 日頃着ないスーツ姿とか、たわいもない私の顔が映っていたものだ。転んだときの膝の負傷の写真とか・・・・そんなものまで見せる必要ないと思ったけど、一度「解禁」になったHAの心は、心許せる友達の前では、どうしようもなく「オープン」だった。酔っていたとはいえこれには参った。
翌日も彼は飲み歩いた。同じく高校時代の友人だった。その彼には、今だから言うが、お前(HA)が結婚するとき、「本当にその人(今の奥さん)か?」と聞きたかったそうだ。でも彼(HA)が決めたひとだからどうこういうのは失礼と思い言わなかった・・・・・と。それは前日飲んだ友人にも言われていた。
結局私たちは、周りから「本当に(相手は)その人なの?」と思われて結婚していた。
私にいたっては母親から「本当は好きな人が別にいたんじゃないの?○○(私)があーゆうタイプ(今の旦那)を選ぶとは思わなかった」と言われているくらいだから・・・・・・。
その翌日も彼は飲み歩き、最初に話した友人の家に行き奥さんともいろいろ話しをしたようだ。どの人も、彼を支持した。そこまで好きな人がいるのは素敵で幸せなことだと。しょうがないんだと。
彼は毎晩、私に電話したくて、年末の寒い夜の街を歩いて家に帰った。でも、私は旦那が家にいるわ、なかなか寝てくれないわで、電話には出られなかった。
私は私で、地元の短大時代の友人に、その重い心境を打ち明けていた。
続く
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